ナミさん
1/8(金)。
朝、ナミさんこと南正人の訃報に言葉を失う。楽屋にとって、もっとも関わりの深いミュージシャンと言えるかもしれない。楽屋ライブの形を作ってくれたミュージシャンだった。学生時代、京都ろくでなしで初めてナミさんの歌を聴き、90年に自主制作で出された「スタート・アゲイン」が一番の気に入り盤だった。当時のバンド、南正人&リバーでくりひろげた京都拾得でのライブは本当にすごかった。楽屋を始めるべく、ろくでなしで短期の丁稚奉公をさせてもらった2000年のはじめ、マスター横田さんに紹介してもらい、村上で店をやりますのでぜひ歌いに来て下さいと言うと、楽屋開店の翌年に本当に来てくれたナミさん。記念すべき第1回のライブは、45人ものお客さんが詰めかけて、それはそれは超大盛況のすさまじいライブとなった。それ以来、いったいナミさんには何度楽屋で歌ってもらっただろうか。結局、おととしの8月に辻村マリナさんと是非さんと来てくれたのが、楽屋での最後のライブとなった。いつもとまったく変わらない、とても元気なナミさんだったので、突然亡くなってしまうというのが未だに信じられない。1月7日の横浜でのライブのさなか、曲と曲の合間にふっと倒れ、バンドのドラマーで共演していたせがれさんがうしろから駆けつけて、抱きかかえて声をかけると、一度大きく息をはいて、そのままおだやかに息を引き取ったという。最後の最後まで、とことん豪快な人だった。ナミさんの音楽は、ずっと楽屋で聴き続けます。
1/10(日)。
村上個人囃子こと菅原さんによる楽屋生音日曜版。感染症の拡がりと大雪というダブルパンチで誰も来ないと思いきや、ダーシーさんご来店。いつもありがとうございます。いつも独特な選曲で思いがけない曲を聴かせてくれる菅原さんだが、今回も電子サックスで宇宙戦艦ヤマトからキャロルまで、幅広く楽しませてくれた。蛇使いのような音質による「異邦人」が良い。茶さん美幸さんも来てくれて、小さな宴となる。
1/13(水)。
寒波にやられて数日間凍結していた水道が復旧。水のありがたさを改めて思い知る。悩んだ結果、楽屋生音日曜版をしばらく休むことにする。1月2月と日曜版にエントリーしていただいていたミュージシャンに連絡して、皆さんから了承とともにありがたいお言葉をいただき、感激する。早くまた思い切り生演奏が楽しめる世の中になってもらいたい。
1/15(金)。
もはや花金などという言葉は意味を成さなくなってしまった静かな金曜の夜、初めてと思しきお一人様がご来店。開口一番、申し訳なさそうに「東京から来たのですが、大丈夫ですから…」。こんな時期でも、自分は行きたくなくとも、仕事でどうしても移動しなければならない人たちがいる。そういう人たちは旅先で肩身がせまくなってしまいがちだが、せっかく駅前でひっそりやっているのだから、少しでもそんな人たちの癒しの場になれればと思う。
1/17(日)。
浅川マキが亡くなって11年が経つ。今年も開店から閉店まで彼女の歌を聴く。浅川マキの歌う「あたしのブギウギ」を聴いて、わたしは浅川マキが好きになった。作曲は南正人。この夜もこの曲を聴いて、浅川マキとナミさんを思う。
1/22(金)。
久しぶりに、少しにぎやかな楽屋となる。3人組のお客さんが来てくれたのは今年初めてのことだ。夜も更けたころ、最後に残ったモキチさんと、ナミさんを偲びながら少し飲む。
1/25(月)。
ジャズの好きな常連さんと、ビル・エバンスや与世山澄子を聴く。久しぶりに、シータさんとトーさんがご来店。いつものように浅川マキをかけると、シータさんが浅川マキが夢に出てきたと言う。以前楽屋で初めて浅川マキを聴いて、相当なインパクトがあったようで、妖怪のような浅川マキに夢の中で追い回されたらしい。まさに店主冥利に尽きる素敵なエピソードに感謝。
1/28(木)。
せいのさんがご来店。ふたりで、三上寛やなぎらけんいちなど、70年代のフォークを聴く。昨年出された三上寛の「アピア1979」がいい。渋谷アピアで初めて歌った三上寛29歳の記録。いつになるかはわからないが、次回の楽屋での三上寛ライブがとても楽しみだ。
【今月の数枚】
回帰線/南正人
スタート・アゲイン/南正人
希望峰/南正人
恋心/南正人
人生の楽屋裏/南正人
南正人ライブ
Can't Buy A Thrill/Steely Dan
Gaucho/Steely Dan
浅川マキの世界/浅川マキ
MAKI II/浅川マキ
浅川マキライブ
Blue Spirit Blues/浅川マキ
裏窓/浅川マキ
MAKI Ⅵ/浅川マキ
灯ともし頃/浅川マキ
流れを渡る/浅川マキ
スキャンダル京大西部講堂1982/浅川マキ
ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった/浅川マキ
アメリカの夜/浅川マキ
Underground/浅川マキ
You must believe in spring/Bill Evans
Interlude/与世山澄子
Thelonious himself/Thelonious Monk
KIKI/梅津和時KIKI BAND
Hayakawa/早川岳晴
hums for midnight amble/渡辺隆雄&早川岳晴
Complete Recording Vol.4/Bessie Smith
太陽/火取ゆき
サーカス/火取ゆき
Yellow Carcass In The Blue/笠井紀美子
Getz & Gilberto/Stan Getz & João Gilberto
Stand The Pressure/Cobra
For Real!/Hampton Hawes
Original Folk Blues/John Lee Hooker
Rocks The House/Etta James
Tropical Dandy/細野晴臣
Dja Maro Drom/Häns'che Weiss
Samba Do Mar/Dusko Goykovich
アピア1979/三上寛
葛飾にバッタを見た/なぎらけんいち
Lip Cream's Thrash Til Death/Lip Cream
Outsider/V.A.
Eric Dolphy At The Five Spot Vol.1
Outward Bound/Eric Dolphy
Out There/Eric Dolphy
Here And There/Eric Dolphy
Swing, Swang, Swingin'/Jackie McLean
Take Ten/Paul Desmond
Spain/Michel Camilo & Tomatito
Keepin' The Sprit/Andreas Hertel
0コメント