福島

2/22(火)23(水)。阿部さんに会いに、福島。坂町から米坂線で米沢、米沢から山形新幹線でひと駅の福島と、2回の乗り換えで福島に到着。村上から3250円(乗車券2520+新幹線特急券730)とそれほど高くもなく、福島は思った以上に近いということを初めて知る。久しぶりに乗る米坂線がとてもよかった。雪の中を流れる荒川は、いつ眺めてもほれぼれするほど美しい。関川村~小国~米沢と、まだまだとんでもなく雪深い。かなり雪のとけた村上は恵まれた土地だと思う。正午すぎに福島に着き、「天山」という定食屋で昼飯。鶏のから揚げがうまい。ビールがサッポロの大ビンというのもうれしかった。駅前のリッチホテルにチェックイン。素泊まり3500円で、13時から翌12時まで23時間滞在可、しかも新聞がフロントに山積みにされており、入り日去り日どちらももらえるというありがたい宿。部屋によけいな荷物を置き、阿部さん宅を目指して歩く。阿部さん宅は福島駅から約8.5kmのところにあり、ちょうどいい腹ごなしの散歩になる。途中、「自家焙煎珈琲じゃ豆」という喫茶店に立ち寄って小休止。コーヒー豆を売るのが主ということだが、「じゃ豆」と書いて「じゃず」と読む店名の通り、ジャズ好きのマスターがいとなむジャズ喫茶でもある。とにかくマスターのコーヒーに対する情熱が並大抵ではなく、コーヒー講習会さながらのお話はとても勉強になり、コーヒーに対する認識がかなり変わったほどだった。好みを問われ、苦くて濃いのが好きですと言うと、「タンザニアブラック」「マンデリン」と2杯も試飲させていただき、これがまた実にうまいコーヒーで驚いた。どちらも70度という低音のお湯でいれるのがポイントらしい。温度計でしっかり温度をはかりながら水温を調整して丁寧にコーヒーをいれるマスターを見て、楽屋でのコーヒーのいれ方ももう少しきちんとしなければ・・と思った。思わぬ展開に予定以上に長居してしまったが、再び歩き始め、16時半ころ何とか阿部さん宅に到着。約2ヶ月ぶりに会う阿部さんはとても元気だった。しばし積もる話に花が咲き、阿部さんの福島での暮らしが家族仲良く充実したものだとわかり安心する。骨董品のコレクターでもある阿部さんは、貴重な蓄音器でデューク・エリントンのSP盤を聴かせてくれた。初めて聴く蓄音器の音というのがまた強烈なインパクトで、すっかり楽屋でもほしくなってしまった。未来少年コナンに出てくるロボノイドを動かすときのように、箱の脇に棒を差し込んでぐるぐるネジを巻き、金属製のレバーをSTOPからAUTOにずらすとターンテーブルがまわり始める。ずっしり重くて大きなアームの先に付けられた千枚通しの先っぽのようなシンプルな針を落とした瞬間のブチブチブチブチという音にまず感動。ビッグバンドジャズの演奏が箱の中から流れてきてまたまた感動。どこから出てきているのかよくわからない音は、電気を通していないのにとてもでかい。78回転なので進みが速く、10インチとおぼしきSP盤は、おそらく7インチの45回転EP盤と同じくらいの曲の長さと思われる。昔はこうして音楽を楽しんでいたのかと、まさにタイムスリップをした感覚になる。いやはやびっくり。夕食までいただいてしまい、阿部さん特製のビーフシチューがとてつもなくうまかった。初めて食べるメヒカリという白身魚の天ぷら、福島名物というイカニンジン、茶碗蒸しなど、奥様も手のこんだ料理をふるまって下さり、至福のひと時をすごす。夜にはせがれさんの車で宿まで送っていただき、まったく至れり尽くせりの歓待にお礼の言葉もなかった。夜、ひとりで飲みに出る。まずは以前一度だけ行ったことのあるジャズ喫茶「ミンガス」。98年秋東京で会社を辞めた後、東北北海道とジャズ喫茶めぐりの旅に出たときにまず寄ったのが「ミンガス」だった。わたしもこういう店をしたいと思っていると構想をマスターに話して、いろいろとアドバイスをいただいたのだったが、そのときとまったく変わらない、人あたりがよくてやさしいマスターが健在でうれしくなった。わたしが行った時間にはまだお客さんが誰もいなくて、しばらくマスターと話すことができてラッキーだった。79年に開店したという「ミンガス」は、今年で32年になり、わたしの目標年数である30年をとうに越えている。マスターのこの変わらぬ姿勢が長続きの秘訣のひとつではないかと思う。非常に落ち着く店で、しばらくしてやってきた数人の常連さんがうらやましく思えた。2軒目に目指したのが、初めての「涅雅(ねが)」。ここも老舗のジャズ喫茶で、「ミンガス」に行く途中に場所を確認したら看板がついていたのでよしと思っていたのだが、23時すぎに行ったら残念ながら閉店していた。3軒目の予定を2軒目にくりあげて行ったのが、ブルースバー「なまず亭」。何度か噂で聞いたことがあり、ここもぜひ行ってみたかった店のひとつ。東京は阿佐谷で「ギャングスター」というブルースバーをやっていたマスターが、故郷である福島にもどってきて17年前に開いたのがこの「なまず亭」で、バーでもあり、ドラムもピアノも常備してあるライブハウスでもある。ブルースやソウルなどのレコードが棚にびっしりつまっており、明るすぎず暗すぎずの灯りが心地よく、これまた落ち着いて飲めるいいバーだった。スリーピー・ジョン・エステスのブルースを聴きながら、ラム酒を飲む。お客さんが誰もいなくて、ここでもマスターとゆっくり話すことができて客としてはうれしかったが、お店にとっては決してよいことではない。そういえばこの晩の福島の繁華街はきらびやかながらも何だか静かだった。やはり今年の冬はどこもきびしいのかもしれない。とはいえ、福島でまた寄りたい店が増えたのはうれしいことだ。「なまず亭」を出たときには1時をまわっていたのでおとなしく帰ろうと思ったが、小腹がすいていたので帰り道にあった「鮨乃家」という鮨屋に寄ってしまう。2時までやっている寿司屋というのもめずらしいと思うが、なかなかよかった。会津の「栄川(えいせん)」を燗でもらい、軽く寿司をつまむ。回転してない寿司屋だったので勘定が心配だったが、お品書き通りのいたって良心的な値段でほっとする。明るく話しかけてくれる若いご店主も好印象だった。翌日はゆっくりと11時前の新幹線で米沢。出発までまだかなり時間があるのにすでに停車している坂町行きの中で、定番弁当「牛肉どまん中」と「出羽の雪」。荒川の絶景にまたいやされて、15時前に村上着。ちょくちょく出かけたいコースとなった1泊2日だった。阿部さん、ありがとうございました。米沢駅。まだまだ雪が多い。摺上川(すりかみがわ)。阿武隈川へと流れる。コロンビア製の蓄音機。福島の繁華街、パセオ通り。ミンガス。なまず亭。今泉駅での「スウィングガールズ」号。荒川。

楽屋 GAKUYA

お酒とコーヒーと音楽の店【楽屋】です。 ホームページの引越しをしました。 新しいアドレスは以下の通りです。 よろしくお願いいたします。 https://ekimae-gakuya.jimdofree.com