酒田〜吹浦〜象潟

6/4(月)。朝早い電車で酒田まで行き、酒田から吹浦(ふくら)まで歩く。まるで真夏のように暑い日となり、汗だくになりながら歩く。海岸線ではなく、ほんの少し内陸の遊佐(ゆざ)を経由してみたが、酒田から遊佐を目指すと、鳥海山に近づいて行く格好になる。ほかの山々とは規模がまったくちがう鳥海山は、黒いシルエットにまだら模様の残雪が映え、初めはああきれいだなあと思っていたのが、近づくにつれ、何だかウルトラ怪獣のように見えて薄気味悪くなってきたのが不思議だった。大きいものは、得てして気味が悪い。
昼食に、かねてより行きたかった「ケンちゃんラーメン」の遊佐支店。このラーメンが実にうまかった。しょっぱめのしょうゆ味スープに、自家製の極太ちぢれピロピロ麺。これはぜひまた食べたい。ケンちゃんラーメンは酒田本店のほか、庄内に平田店(酒田市)、鶴岡店(鶴岡市)、大山店(鶴岡市)、三川店(三川町)、余目店(余目町)、遊佐店(遊佐町)があり、そして山形市に山形店、秋田にも秋田店(秋田市)と象潟(きさかた)店(にかほ市)と、今のところ全部で10店あるらしい。各店それぞれが製麺しているようで、ピロピロ度もちがうという。例えば遊佐店は「ユザケン」、三川店は「ミカケン」というふうに、支店の愛称まであるというからおもしろい。これからそれぞれのケンちゃんに出かけるのが楽しみとなった。
遊佐から海の方に歩き、夕方、初日の目的地である吹浦に到着。約26km。所要時間、約7時間半。吹浦駅の目の前にある「丸登旅館」に投宿し、夕食と朝食をいただく。岩ガキが有名な吹浦ということで、夕食に岩ガキを少し期待していたら、しっかり2つも出してもらえて感激。おかみさんいわく、6月から旬が始まるとのこと。夕食にいただいた酒は、吹浦の酒「東北泉」(とうほくいずみ)。これを燗にしてもらい、さまざまな魚とともに美味しくいただいた。村上で言うところのヤナギガレイを、このあたりでは「首長カレイ」と言うらしい。
6/5(火)。朝早く朝食をいただいて、7時半、宿を出発する。海沿いに北上し、秋田県の象潟を目指す。この日も朝から前日のように暑い。前日が鳥海山をながめながら歩いたのに対して、この日は笹川流れの延長線上と納得できるほどきれいな海に癒されながら歩く。
しばらく国道7号線を歩き、三崎公園を少し行ったところから秋田県に入る。秋田県にかほ市は、仁賀保町と象潟町と金浦町(このうらまち)が合併してできた、わりと新しい市。ずっと国道を歩くのはいやだったので、秋田県に入ってひとつ目の駅である小砂川(こさがわ)駅のあたりから国道を外れて、のどかな田んぼ道を歩く。少しするとすっかり海が見えなくなり、右手に鳥海山が現れる。ちがう角度から見る鳥海山もまた乙なものだった。奈曽川にかかる奈曽大橋からの絶景に、しばしぼーっとなる。
15時半、象潟駅にてゴール。歩行距離、約25km。所要時間、約7時間半。この日は駅前の「山形屋旅館」で素泊まりをお願いした。
象潟には多くの酒場があるようで、シャワーを浴びてひと休みしたあと、散策へ出かける。少し歩いてみて、結局、来るときに通過した居酒屋「笑福」に入る。ご夫婦ふたりで切り盛りする居酒屋で、安くてボリューム満点の素晴らしい店。糸魚川で知ったゼラチン質の深海魚ゲンゲをこちらではスガヨと呼ぶらしく、そのスガヨの天ぷらを食べてみたが、あっさりふわっとした白身という感じの天ぷらでなかなかうまかった。酒は、象潟と合併した仁賀保の「飛良泉」(ひらいずみ)。秋田の酒特有のずっしり感があまりなく、すっと飲みやすい。数ヶ月前にかほ市から来てくれたお客さんに小砂川産の岩ガキが高級ブランドだということをたまたま聞いていたが、本日のメニューコーナーにその小砂川産岩ガキがあり、喜んでひとつ食べてみる。正直言って山北の岩ガキとのちがいがよくわからなかったが、当然のようにうまかった。桑川産、吹浦産、小砂川産の岩ガキを、ならべて食べ比べたらどんなに楽しいだろうか。お店のご夫婦もとてもきさくで、象潟のことばで町の話をいろいろと聞かせてくれた。カウンターで隣り合わせた宮城から来たというご夫婦ともあれこれ話しながら飲めたのも楽しかった。この「笑福」で飲むために、また象潟に行きたい。

楽屋 GAKUYA

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