Joshua Breakstone Trio

5/7(火)。

 北への歩き旅を再開すべく、電車を乗り継いでまず能代入り。駅前の酒場「千両」に友人と合流して、しばし飲み語らう。2度目の千両は、相変わらず居心地抜群の素晴らしい酒場だった。さくら刺やつくねなどで、おそらく三冷のホッピーを数杯飲む。五能線に乗り、秋田県最北の駅である岩館まで。「民宿いがわ」の女将さんがわざわざ車で迎えに来てくれて、ひと晩素泊まりでお世話になる。朝も出発が早く、本当に寝るだけの逗留で申し訳なかったが、きれいで快適な宿屋だった。


5/8(木)。

 岩館から深浦まで歩く。朝7時に歩き始めて、約15分ほどで青森県入り。秋田県八峰町から、青森県深浦町へ。深浦町は、わたしのひいき力士、安美錦のふるさとであり、少し感慨深い。ときどき小道に外れながら、国道101号を北上する。

曇り空で風もあり、海はかなりしけているが、エメラルドグリーンで美しい。

昼食に寄った食堂「静観荘網元」のおまかせ定食がすごかった。1000円ぽっきりで、刺身に揚げ物、煮魚などなど盛りだくさんのおかずに、ご飯とみそ汁はおかわり自由。つい食べ過ぎてしまい、苦しくなる。

岩崎地区から101号線を外れ、峠道である県道192号線へ。だらだらと長い坂が続くこの山道がつらかった。ぜえぜえ息を切らせながら歩く。

 峠を越えると、今まで苦労してきて良かったと思えるほどの快適な下り。約9kmの峠道の先に、深浦町の中心街が現れる。深浦駅を目指して港町を歩いていると、「太宰の宿・ふかうら文学館」という建物。16時閉館とあるので今入るしかないと思い、靴を脱いで入館。元は秋田屋旅館という宿屋で、太宰治が小説「津軽」の取材旅行の途中に泊まったらしい。太宰の泊まった部屋がそのまま残されていた。秋田屋の主人が偶然にも太宰のお兄さんの同級生で、ふらりと秋田屋に泊まりに来た太宰に気付いて、これはこれはと手厚くもてなしたという。太宰と深浦のかかわりを少し知ることができた。16時ころ、深浦駅でゴール。休憩なども含めた所要時間:約9時間。歩行距離:34.5km。今年も無事に歩き旅が再開できてほっとする。

 少し道をもどり、1泊夕食でお願いしていた田中旅館。海の見える部屋で、旅館にはめずらしく椅子と机がある。熱い風呂に入って癒されて、部屋で夕日を見ながらの夕食。食後は外にくり出さず、おとなしく健全な時間に床に就く。

5/9(木)。

朝、深浦→東能代→秋田と電車を乗り継いで、象潟を目指す。海岸線を走る五能線の窓から見える景色が素晴らしい。前日は途中から峠道にはずれたので、この海岸線を見るのは初めてだった。こちら側にもゆっくり来てみたい。

 象潟で途中下車をして、「その食堂」で昼食。極太平打ち麺ということで初めて行ってみる。肉タンメン800円。やわらかく焼かれた肉とフェットチーネのような黄色い太麺がうまい。人の絶えない人気店でも殺伐とした空気のいっさいない雰囲気で居心地もいい。また行きたい店。

 年配のご夫婦が切り盛りする小さな食堂。象潟駅から歩いてすぐのところにあるので、途中下車で寄れるのもありがたい。

 夜、魚武のジャンボさんが数日前に亡くなったことを知る。半年前にお店を閉めて治療に専念していたジャンボさんだったが、残念ながら回復することはなかった。キスの梅肉揚げ、煮込み、クワイチップ、天ぷら。ジャンボさんの料理にどれほど癒されたことだろう。一見無愛想に見えて、実はおしゃべりが大好きだったジャンボさん。魚武定休日の月曜の夜たまに楽屋に飲みに来て、釣りや料理の話をたくさん聞かせてくれた。あのおしゃべりがもう聴けないと思うと、とても寂しい。


5/12(日)。

 楽屋生音日曜版で、村上個人囃子こと菅原さんのアルトサックス演奏。毎奇数月の第2日曜、定期的に演奏しに来ていただいており、日曜版参加者の中でも古参となりつつある菅原さん。奇想天外の選曲と独特のダジャレで、毎回ほのぼのした時間を演出してくれている。

5/14(火)。

 米国のギタリスト、ジョシュア・ブレイクストーンさんが楽屋初来演。ベースの文河潤さんとドラムスの本間克範さんに共演をお願いし、ふたつ返事で引き受けていただいた。米国のジャズ界で活躍してきた大御所の来演というのは、初めてのこと。緊張しながらライブ当日を待ったが、村上に着いたジョシュアさんは物腰柔らかな紳士で、京都みやげのろくでなしTシャツをいただいて感激する。京都と縁があったジョシュアさんは、数年前から京都に住んでいるという。今回は東京でのライブから村上に入り、2日後に札幌に向かうとのこと。楽屋のような小さな店に来てもらえて、本当にありがたいことだ。


  初めて会った人と、その2時間後にライブをするというのは、ジャズならではのすごさだと思う。文河さんと本間さんはよく知った仲であるが、ジョシュアさんとおふたりはもちろん初対面。今回のライブは、ジョシュアさんが選曲し、その求めに応じて文河さんと本間さんが演奏した。リハの際にはいくらかの緊張感があったが、さすが文河さん本間さんである。英語でジョシュアさんの要求を理解していく。約1時間足らずの音合わせが終わり、開場。そして始まったライブ。1曲目は、パット・マルティーノの「Lean Years」。だと思う。すごい。極々上質のハードバップジャズが目の前で繰り広げられた。


 MCで語られた、米国の50年代のジャズ事情がおもしろかった。50年代活躍したピアニスト、エルモ・ホープは、セロニアス・モンクとソニー・クラークと仲が良かったらしい。日本ではモンクとクラークが人気ピアニストとなり、ホープはそれほどでもなかった。しかしジョシュアさんいわく、ホープはとても素晴らしいコンポーザーだったとのこと。彼の曲から「Mo Is On」がアンコールで演奏され、この曲が素晴らしかった。エルモ・ホープのアルバムはブルーノート5000番台で1枚あったなと思い、久しぶりに引っ張り出してみると、恥ずかしいかな、1曲目が「Mo Is On」だった。それ以降、この盤をはじめ、しばらく聴いていなかった50年代の10インチを聴いている。やはりこの時代のジャズはいい。目覚めさせてくれたジョシュアさんに感謝。


 ミュージシャンお三方と残った有志で軽く打ち上げをする。村上どころか新潟県に初めて来るジョシュアさんに、大洋酒造の「日本国」を飲んでもらったが、これをえらく気に入ってくれて、ボトルの写真まで撮っていたのがうれしかった。


 また機会があれば、ぜひこのトリオで楽屋ライブを実現したいと思う。

5/19(日)。
 歌とギターのデュオ、ユリコさん&マコトさんのタイムによる楽屋生音日曜版。おふたりには今回初めて日曜版で演奏していただいた。中島みゆきやさだまさしの曲を、しっとりと、かつ冷やかに歌い上げるユリコさん。「死ぬまであなたを恨みます」と言うフレーズは、お客さんを存分に戦慄させたと思われる。その歌のあとで、その恨みは愛情の裏返しではないかと笑顔で説くユリコさんが素敵だった。今回は伴奏に徹していたマコトさんであるが、もっとマコトさんのギターが前面に出た曲も聴いてみたいと、勝手ながら思った。次回のタイムの演奏も楽しみ。

楽屋 GAKUYA

お酒とコーヒーと音楽の店【楽屋】です。 ホームページの引越しをしました。 新しいアドレスは以下の通りです。 よろしくお願いいたします。 https://ekimae-gakuya.jimdofree.com